| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PH-032 (Poster presentation)
野生のニホンザルは、ふつう数十頭の群れをつくって生活している。しかし、高崎山に生息する餌付けされたニホンザルの群れは、餌撒きの影響によって700頭を超える巨大な群れに成長している。このような大きな群れで非血縁個体間の関係を形成する要因は何かを探るために、サル寄せ場で頻繁に観察されるグルーミング(毛づくろい)に注目し、ニホンザルの生息地である高崎山と幸島の二ヶ所で個体追跡調査やスキャンサンプリング調査を行って、グルーミングの頻度や行動内容などを分析した。その結果、シラミなどが少ないと考えられた背部を長時間していることや、子ザルはグルーミングを学習しながら成長していることが分かった。さらに、大人ザルどうしのグルーミングではお返し行動があること、グルーミングを多くしている時間帯は群れの中の争いが減少すること、野性に近い幸島群よりも餌付けされている高崎山群の方が1日当たりのグルーミング時間が長いこと等が明らかになった。これらのことから、高崎山群では、グルーミングによって非血縁関係の個体間のつながりを形成することで、大きな群れが維持されていると考えた。