| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T01-4 (Lecture in Symposium/Workshop)
動物の行動は学習によって柔軟に変化する.学習過程は隠れたプロセスであり観測することは難しい.しかしながら,実験者が与える実験環境(インプット)と,そのもとで観察される動物の行動(アウトプット)の情報を用いることで,その過程を推測することが可能である.本研究では,ニワトリ雛の選択系列データから彼らがどのような学習戦略を持っているかを調べた.十字迷路装置を用いて,二者択一選択を行わせた.10試行を1ブロックとし,18ブロックの選択を記録した.二つの餌場のうち,一方をリスクのある餌場とした.高リスク条件では10粒または0粒の粟を,低リスク条件では7粒または3粒の粟をそれぞれ確率1/2で与えた.もう一方の餌場はリスクのない餌場とし,確率1でk粒の粟を与えた.kの値は前のブロックにおけるニワトリ雛の選択によって変え,両者の選択が釣り合う点を探った.最も有名な学習モデルはRescorla-Wagner学習則であるが,ニワトリ雛の選択はその予測から大きく逸脱していた.そこで,別なモデルとしてRoth-Erev学習則を考え,ニワトリ雛各個体の学習がどちらに近いか判別した.その結果,高リスク条件群の個体ほどRescorla-Wagnerに近い学習を行い,低リスク条件群の個体はRoth-Erevに近い学習を行うことがわかった.Rescorla-Wagnerは餌量の精確な学習を可能とする学習則であり,Roth-Erevは習慣依存的選択が現れる学習則である.高いリスクに直面したニワトリ雛は精確な学習を必要とし,それ以外はこれまでと同じ行動をとる(習慣依存)ことがベストなのだと考えられる.本研究ではモデルを構築することにより,ニワトリ雛が環境条件に応じて学習方式を変えられることが示された.