| 要旨トップ | ESJ63 企画集会 一覧 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T03 -- 3月21日 10:00-12:00 RoomD
群れで生活する動物の中には、血縁者を識別し、様々な適応的な行動を示す種が知られる。このような行動は、個体群動態や群集構造を決定する重要な要因となる。植物もまた、血縁者を含む集団内に生育する生き物である。固着生物である植物では、動物とは異なり隣り合った株と永続的に相互作用する。このことから、植物は、近接個体の血縁度に応じてそのふるまいを変える事が適応的であると予測される。今日では、植物が環境の変化を受容して様々な可塑性を示すことは、多くの研究者に受け入れられてきた。しかし、彼らの血縁識別能力とそれに基づく応答に関する研究は、長らく検証されてこなかった。その背景には、血縁識別能力が、複雑な情報処理を可能とする中枢神経系を備えた動物のなかでも、限られた種にしか認められていない現状があろう。また、動物のような中枢的な情報処理器官がみられない植物には、血縁を識別することはできず、また識別に基づく柔軟な応答も困難であると考えられてきたこともあるのかもしれない。
しかし、近年になって、植物が、近接個体の血縁を識別し、動物の社会行動のような様々な可塑性や動きを示すことが明らかにされつつある。本集会では、植物における血縁識別に基づく可塑性についてレビューすると共に、3人の演者に話題を提供していただく。山尾は、種間競争において血縁識別が有利に働くことを報告する。向井は、他種との競争環境下で種子が示す血縁識別と発芽応答に ついて報告する。そして深野は、つる植物の自己識別と巻きつき反応について報告する。植物の巧みな識別応力と柔軟な応答の面から、植物間相互作用を見つめなおし、今後の展望について考えたい。
[T03-1] 種間競争における血縁個体間の協調的ふるまい
[T03-2] 種子における血縁識別:他種の存在で迅速な同期発芽を成し遂げる
[T03-3] つる植物のホスト選択における識別能力と多様なまきつき反応