| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T16-3 (Lecture in Symposium/Workshop)
近年、形質を基盤とする機能群解析や群集距離に関する様々な解析法の発達により、群集研究を一部優占種で議論する方法から群集全体の生態系機能の議論へ発展を見せているが,土壌動物での応用例は少ない.トビムシは種ごとの食性や土壌生息場所などの違いによる同所的な共存と,土地利用や植生、土壌、および攪乱条件などの場所間の違いにより高い多様性を保つ.トビムシ各種の形質や生活史の特徴は,トビムシの土壌生息場所と関連していることが多いため,環境に対するトビムシ群集の形質機能群構造の変化は,既存の生活場所グループの構造変化として捉えられる.
実際にトビムシ群集を形質機能群に分けたところ,トビムシは表層種に多いとされる大型,有眼,有色,大型跳躍器などを持つグループ,深層種に多いとされる小型,無眼,無色,跳躍器欠損などをもつグループ、腐植種に多いとされるそれらの中間形質等,おおよそ表層,腐植,深層に生活するグループのいくつかに分けられた.トビムシ形質機能群の林地操作や地形間に対する反応を解析したところ,トビムシ群集では強い環境変化に対して種や機能群の欠損が生じるネスト構造はみられるが,形質機能群内の種の入れ替わりが頻繁に生じることも明らかとなった.解析技術の発達により,形質機能群間の環境に対する構造変化は,トビムシの土壌生活場所との関連で総合的に解析できた。一方、形質機能群内の違いが何故生じるのかについて直接的に個体群動態に関わる機能を基にした機構から説明されていないことは問題として残る.
トビムシでは,類似機能群内でも,代謝速度の違いや,選好するエサの違い等が知られ,種内でも環境に応じた生存率や繁殖様式の変化が知られている.これらの基礎情報は個体群の増減や撹乱耐性にとって重要であり,今後プロジェクト等で統一的な方法を用いた多種の形質リストの作成に注力すれば,トビムシ群集の理解は一層進むと考えられる.