| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T16-6 (Lecture in Symposium/Workshop)
リター分解プロセスを決定する3大要因として、気候条件、リター形質、分解者生物が知られている。これら要因のうち、気候条件とリター形質については、すでに数多くの研究が為され、その重要性が広く認識されている。一方、微生物と土壌動物から成る分解者生物の機能については、未だ普遍的な理解が得られていないのが現状である。気候条件とリター形質は分解速度の60-70%を決定すると考えられているが、しかし、これらの要因と分解速度の関係は、ほとんど全て分解者生物の活動を介した間接的なものである。したがって、今後、気候変動下におけるリター分解速度を気候条件やリター形質から予測するためにも、分解者生物の機能を明らかにすることが必須である。演者は、分解者生物の中でもトビムシ、ササラダニ等の土壌小型節足動物に焦点を当てている。これらの分類群は陸域生態系のほとんど全ての土壌において生息し、その個体数は平方メートルあたり数万から十数万個体と優占する。腐植や微生物を摂食し、微生物を運搬することで、分解プロセスに関与することが知られている。本発表では、リターバッグ法を用いた複数の野外実験データをもとに、リター分解プロセスに対して、気候条件やリター形質の影響と土壌小型節足動物の影響がどのような交互作用をもつのか議論する。これらの実験では、これまでリターの異質性として加味されることが少なかった植物器官の違いを考慮するために、葉リターだけでなく細根リターも用いている。葉リターと細根リターの形質の差異は葉リターにおける植物種間差を凌駕し、分解が進行する土壌層位についても、葉リターは地表面、細根リターは地中というように異なる。したがって、地上部と地下部の双方の分解プロセスを考慮した、土壌小型節足動物の機能のより包括的な議論が可能であると考えている。