| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-04  (Oral presentation)

真正紅藻類にみられる果胞子体の進化についての理論的研究

*別所和博(総合研究大学院大学, 学術振興会特別研究員PD), 佐々木顕(総合研究大学院大学)

 大型藻類や陸上植物の生活環では、しばしば核相交代に伴い現れるhaploidとdiploidの細胞が多細胞化することで、haploidの配偶体とdiploidの胞子体の世代交代が観察される。さらに,真正紅藻類では雌性配偶体上で受精した卵細胞が多細胞化することで、果胞子体と呼ばれる組織が作られる。果胞子体は雌性配偶体に場所的に依存しているだけでなく、雌性配偶体から栄養供給をうけていると考えられている。
 本研究では、この雌性配偶体による果胞子体への栄養供給の進化について、数理モデルを用いて解析した。そこでは、まず母親である雌性配偶体の形質により栄養供給量が決定されているという仮定のもとで、進化的に安定な雌性配偶体による受精卵への栄養投資量を調べた。解析の結果、果胞子体の再生産量を雌性配偶体の死亡率で割った、雌性配偶体の広義の期待生涯繁殖成功を最大化する栄養投資量が進化的に安定になることが明らかになった。さらに、このような胞子体が配偶体上で養育される系では雌性配偶体由来の遺伝子と雄性配偶体由来の遺伝子間にコンフリクトが生じる可能性があり、その問題についても検討する。


日本生態学会