| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) A02-05 (Oral presentation)
産業廃棄物の不法投棄は深刻な問題を引き起こす。人里離れた山奥に不法投棄される事が多く、その中に含まれる化学物質が生態系に悪影響を及ぼしてしまうのだ。では、どのような制度によって不法投棄を防ぎ生態系を守ることが可能になるだろうか。
日本では5つの業種の分業によって産業廃棄物の処理が行われている。まずは排出事業者によって排出された産業廃棄物を一次収集運搬業者が中間処理業者へ運搬し処理を行う。その後、二次収集運搬業者が最終処理業者へ運搬し、埋め立てを行う。各業種はこのような適正処理よりも不法投棄を行う方が費用はかからないため、不法投棄を選ぶインセンティブが働く。しかし不法投棄は生態系に負荷を与え、その負荷を回復費用としてすべての業者が費用負担をおこなうことになると、結果的には不法投棄によってコストがかかることになる。つまり社会的ジレンマの問題となる。
現行では不法投棄を抑制するために2つの罰則がある。不法投棄が摘発されたときに罰金を支払わされる罰則(当事者責任システムと呼ぶ)と排出事業者が行政にマニフェストを提出しないと罰が与えられるというもの(排出事業者責任システムと呼ぶ)である。環境省の不法投棄件数及び投棄量データによると当事者責任システムと排出事業者責任システム双方の強化以降も不法投棄件数は増えたが、十年以上前から減少傾向にある。環境省のデータは新規判明事案のみのため、不法投棄が発見されにくくなっているという解釈も出来る。では、この2つの罰則の不法投棄の抑制効果はどの程度なのだろうか?
そこで本研究では、各罰則がどの程度不法投棄を抑制/促進するのかについて、進化ゲーム理論のリプリケーター方程式を用いて解析を行った。結果は、当事者責任システムが不法投棄を増えてしまうこともあり、排出事業者責任システムの方が不法投棄の抑制効果があることが示された。