| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) A02-07  (Oral presentation)

Sparse S-map法(SSM)による生態学的相互作用の推定とその応用

*鈴木健大(国立環境研究所)

 あらゆる生物群集において、種間の協力・拮抗・競争関係などからなる相互作用ネットワーク構造を知ることは、その動態や安定性、機能の背後にあるメカニズムを解明するために重要である。微生物群集では、近年メタゲノム解析による時系列データの取得によって、多様な種の織り成すダイナミクスが明らかになりはじめている。こうしたデータは微生物間の相互作用を推定するために利用できる可能性があるが、現状では十分な解析手法があるとは言い難い。例えば、このような目的に時系列間の相関の正負が利用されることがあるが、これは上述のような種間関係を必ずしも反映しない。Sparse S-map法(SSM)はこうした時系列解析に利用できる数式フリーの相互作用推定・動態予測手法であり、種間関係を直接推定することができる。
 SSMの基本性質を把握するため、線形回帰を利用した(数式依存の)相互作用推定手法であるLIMITSとの比較を行った。LIMITSと比べると、SSMは強い振動が生じる系でも精確な推定を行うことができ、平衡状態の周りでのパフォーマンスはほとんど変わらなかった。さらに、異なるタイプの機能的反応を持つ仮想的な多種系群集を対象とした場合でも、SSMはLIMITSを上回るパフォーマンスを示した。以上の結果は、SSMが時系列データから相互作用推定を行う際に、時系列の性質や含まれる相互作用メカニズムに依存せずより広く利用可能な手段であることを示している。最後に、SSMを実際のマウス腸内細菌叢データに適用した結果を紹介し、今後の展開について触れたい。


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