| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-02  (Oral presentation)

温暖化に対する生物多様性の安定性効果

*鈴木亮(筑波大学・菅平センター)

多様性・安定性仮説は、生物多様性が高い群集ほど環境変動に対し高い安定性を示すと予測する。地球温暖化は現在最も懸念される環境変動であるが、温暖化に対しても生物多様性が群集の安定化をもたらすのかはわかっていない。
 本研究は、種多様性が高い植物群落ほど、温暖化に対し安定性を示すか(バイオマスの変化が小さいか)、を実験的に検証した。実験ほ場で、同所的に生育する草原性草本4種(ススキ、ヨモギ、イタドリ、コウゾリナ)を用いて、1種のみと4種混植の栽培条件をつくり、それぞれ温暖化環境(ビニールハウス内)と非温暖化環境下(対照)で栽培して、群落の生産性や安定性を比較した。温暖化に対する安定性の指標は、温暖化条件と対照の間のバイオマスの平均値を分散で割ったものと定義した。
 結果、地上部、地下部、全体の平均バイオマスはいずれも4種条件の方が1種条件より、温暖化・対照どちらの環境でも大きかった。また、統計的に有意ではないものの安定性も4種条件の方が高かった。また、実験処理に対する種特異的反応がみられ、どの種も非温暖化環境(対照)の方が温暖化環境よりバイオマスが高い傾向があり、コウゾリナを除く3種では1種栽培条件の方でよりバイオマスが大きかった。
 これらの結果は、多様性−生産性関係と多様性−安定性関係は、どちらも温暖化環境でも正の関係を維持することがわかった。すなわち、多様性の高い群集ほど環境変動に頑健である可能性が示唆される。4種条件でより高い生産性と安定性が見られた理由としては、コウゾリナのバイオマスと生存率が4種条件で高かったこと、他3種のバイオマスが単一種条件でばらつきが大きかったことが考えられる。


日本生態学会