| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) B01-09  (Oral presentation)

ネオニコチノイド剤の曝露に対する水生昆虫類群集の応答

*小橋興次, 森美穂, 早坂大亮(近畿大院・農・環境管理学)

ネオニコチノイド系農薬は,有機リン系やカーバメート系の農薬よりも環境中に負荷を与えない農薬として1980年代に開発され,90年代以降急速に普及した.しかし,これらの剤が普及するにつれて,水圏・土壌圏を問わず様々な生物に対する影響が指摘されるようになった.一方で,農薬による生物多様性への影響の緩和を推進していく上では,生態系や群集などの複雑系を対象とした知見の集積は必須である.そこで本研究では,ネオニコチノイド剤のうち最も古いイミダクロプリド剤と最も新しいジノテフラン剤の2剤を対象に,特に水生昆虫類に対する生態影響の違いについて比較した.試験は農薬の実使用現場である水田の環境を対象に,3年間に渡ってモニタリングを行った.なお,農薬曝露以外の条件を可能な限り均質化するため,人工水田で実施した.モニタリングの結果,8目21科28属32種9944個体の水生昆虫類が採集された.投薬後の水生昆虫類の種組成の動態について除歪対応分析(DCA)で解析した結果,投薬1・2年目では,処理区間でそれほど大きな違いは認められなかった.しかし,3年目になって農薬処理区での影響が顕著に見られるようになり,イミダクロプリド処理区では投薬1ヶ月後以降,ジノテフラン処理区では3ヶ月後以降に種構成が大きく変化し,試験終了時点においても無処理区とは異なる種組成のままであった.一般化加法モデル(GAM)を用いて各種に対する曝露の影響を解析した結果,14種の生物種に有意な影響が検出された.イミダクロプリド処理区では,投薬1年目に2種,2年目では5種,3年目には7種と,時間とともに無処理区と比べて減少した種の数が増加した.一方,ジノテフラン処理区では投薬初期には明確な影響は検出されず,3年目に初めて,3種の水生昆虫類が減少するなど,イミダクロプリド剤よりも遅効的な影響が示唆された.


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