| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) C01-07  (Oral presentation)

監視カメラによる山岳森林島・御蔵島(東京都)での野生化イエネコの生息状況

*小木万布(一社)御蔵島観光協会), 稲村優一(東京農業大学), 岡奈理子(公益財団法人山階鳥類研究所)

 御蔵島は希少な昆虫や鳥類が生息する日本最大の海鳥繁殖島である.増加したノネコ対策として、村役場は421頭を捕獲・不妊去勢・再放獣(TNR)し,民間の協力のもと里親を探して島外搬出を行っている.しかし2011年以降,ワナには既手術の猫が未手術猫よりはるかに多く捕獲されており,捕獲区域や搬出数も限られているため,効果的な頭数制御方法になっているとは言い難い.その一方で森林部のノネコの分布状況は未知であった.そこで,私たちは特別保護地域や鳥獣保護区に線引きされる島南部の森林に無人監視カメラを常設し,ノネコの生息状況とTNR猫割合を調べた.
 4エリアに各2台の合計8台のセンサーカメラを設置した.撮影モードは動画20秒撮影,作動後のインターバルを10秒に設定した.写ったノネコの模様,尾の特徴,不妊去勢印(耳カット),同伴個体の有無を記録した.これらの特徴のなかから,模様の顕著さ,同模様でも尾の特徴が異なる,耳カットの有無が異なるもののみを別個体とし,それ以外は同一個体とみなした.
 カメラ設置期間は2015年12月4日〜2016年11月14日まで,稼働日数は最長347日,最短187日だった.カメラ8台の撮影動画数総計は9,952,ノネコが写る動画数は770だった.全カメラにノネコが撮影され,2個体一緒に写ることもあった.重複の可能性を極力排除した結果,55頭が識別された.いずれも栄養状態が良かった.そのうちTNR猫が12頭,捕獲未経験すなわち繁殖可能な個体は29頭いた.
 センサーカメラが捕捉する狭い調査地でもノネコが多数おり,識別できた個体だけでも繁殖可能猫が半数以上を占めた.TNR猫の多くが生存すると仮定すると,島全体のノネコ数は1,000頭を越える可能性がある.TNRは既手術猫の割合が全体の7割以上でないと抑制効果が無いとの報告がある.大幅な捕獲数アップや他の方法を検討する必要があろう.


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