| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) C01-10 (Oral presentation)
セイバンモロコシは関東地方の河川堤防で広く生育し管理上問題となっている高茎の帰化植物である。本種は,築堤後間もないシバの優占する法面で急速に蔓延化するため,とくに陽光地における競争力が他種に勝ると考えられる。そこで光応答の点から本種の生育特性を解明することを目的としてポット試験を実施した。
全天,相対光量子束密度40%,同10%の3条件を設け,2016年5月19日に各遮光区で播種を行った。3葉期の個体を各区1/5,000aポット5個に各ポット3個体移植し,7月28日に1本に間引きしたうえで育成した。用土には利根川築堤用の高水敷の掘削土を利用した。同年10月中旬に部位別乾重,草高を測定した。比較のため,河川堤防の優占種のひとつである在来種のオギについても同様の試験を実施した。遮光区におけるセイバンモロコシの発芽は全天区と比較して約2週間遅れた。そこで本種については,全天区で発芽した個体を2つの遮光区に移し,全天区と生育期間の揃った遮光区のポットも用意した。
生育期間を揃えた試験の結果,全天区においてセイバンモロコシはオギと比べて草高が高く地下茎が長い一方,茎数は少なかった。全重量に有意差は認められなかったが,葉重はオギが有意に上回った。40%区においては,セイバンモロコシがオギよりやや草高が高いほかは,いずれの指標も両種に有意差は見られなかった。10%区では両種とも著しい生育不良となった。発芽時期の遅れは,とくに40%区においてセイバンモロコシの全重量を著しく減少させたものの,40%区で種子から育成した個体は,発芽後に40%区に移動した個体よりも地上部への分配を増し,草高を増加させた。セイバンモロコシはオギと比較して,三次元的に個体をより伸長させることで,群落における種間競争を有利に進めていると考えられる。また,軽度の遮光下において草丈の伸長を進めることも,本種の競争力を高める点と考えられる。