| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-03 (Oral presentation)
マダガスカル固有の小型霊長類であるジェントルキツネザルは、「バンブーリーマー」という別称が示すように、竹食に特化した特異な採食戦略をとる。多くの小型霊長類が消化しやすい果実や昆虫を主食とする中、竹という消化困難な食物に依存するジェントルキツネザルは極めて異質な存在である。同じく竹を食べるパンダは、大型化することで代謝率を低下させ咀嚼能力を向上させた。一方、大型化という戦略をとらなかったジェントルキツネザルは、消化能力を向上させることで竹食に適応してきたと考えられる。盲腸や結腸は腸内細菌が多く生息している場所であり、胃よりも大きな盲腸をもつジェントルキツネザルは、そこに棲む腸内細菌によって繊維成分の消化を促進していると推測した。本研究では、マダガスカル・ラヌマファナ国立公園にて同所的に生息する野生ジェントルキツネザル3種(ハイイロジェントルキツネザル Hapalemur griseus、キンイロジェントルキツネザル H.
aureus、ヒロバナジェントルキツネザル Prolemur simus)の糞を採取し、次世代シークエンサーで網羅的に細菌種を同定した。それぞれ竹への依存度が異なることから、採食生態と腸内細菌叢における類似性および相違点について議論したい。