| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-04 (Oral presentation)
原生林は周辺の二次林の生物多様性に正の効果を与えることが知られている。しかしながら、原生林が二次林に生息する消費者の食性に影響を与えるのか、よくわかっていない。そこで我々はマレーシア・サラワク州の周辺の残存原生林率が異なる複数のマカランガ二次林において、4つの分類群に属するアリ類(Camponotus gigas、Odontomachus rixosus、Pachycondyla spp.、Polyrhachis spp.)の食性が異なるかどうかを調べた。このマカランガ二次林では周辺の残存原生林率が上がるほど、アリ類の多様性が高いことが我々の先行研究によって示されている。我々はアリ類の食性を炭素・窒素同位体比を測定して調べた。また、放射性炭素同位体を測定して食物年齢(一次生産と消費者による消費の間のタイムラグ)を推定した。その結果、周辺の残存原生林率が上昇するにつれてアリ類とリターの炭素同位体比は減少していた。この同位体比の減少は二次林周辺の森林の林冠がより閉鎖していることを反映していると考えらる。一方で、調査地間の窒素同位体比の違いを補正したアリ類の窒素同位体比は、周辺の残存原生林率に対して有意な関係性を示さなかった。炭素同位体比、窒素同位体比、食物年齢は異なる調査地間において、一貫して分類群間の違いを示していた。これらの同位体のパタンは、種多様性への影響とは対照的に、周辺の残存原生林は二次林に生息しているアリ類の食性には大きな影響を及ぼさないことを示唆している。