| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-06 (Oral presentation)
環境DNA分析による魚類相の網羅的な解析手法(メタバーコーディング)の強みは捕獲を伴わずに水試料のみから魚類相組成を明らかにできることにあるが、それと同時に、多地点かつ継続的な調査が容易な点にある。本研究では琵琶湖沿岸に設定した21地点で4季節に採水した試料を環境DNAメタバーコーディングに供し、1年間の種組成変化を解析した。2015年11月、2016年2月、5月、8月の試料から、それぞれ39種、39種、46種、39種が検出され、合計では50種が検出された。群集組成について非類似度をもとにPERMANOVAで解析したところ、環境変数として与えた緯度と季節が、ともに有意な効果を持っていた。また、季節と緯度との交互作用は有意ではなかった。地点間距離と非類似度との関わりについてMantelテストによって解析したところ、地点間距離は非類似度と有意な正の相関を持ち、距離が離れるほど、非類似度が高くなる結果であった。NMDSによって群集の非類似度をもとに群集間距離を二次元プロットして季節、琵琶湖の中でも南湖か北湖か、そして琵琶湖の東か西かという地点の特徴で地点のまとまりを分析した。結果、北湖と南湖という区分で見た場合に、両グループに区分された地点がもっとも明瞭にまとまってプロットされた。この結果は、琵琶湖の魚類組成は北湖と南湖という、水深その他で大きく特徴の違う水域間でその群集組成も異なっていることを示している。緯度と季節の効果が有意であるというPERMANOVAの結果を受けて、検出されたDNAのリード数について種ごとに緯度と季節に沿っての変化を解析した。結果、フナ類やオオクチバス、ブルーギルのようにこれらの変数にほとんど依存せずにいつでも検出される種や、ウグイのようにほとんど北湖でしか検出されない種、ワカサギのようにほぼ冬のみに検出される種など、様々な検出パターンが明らかになった。