| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) D01-07 (Oral presentation)
環境DNA分析法は、河川水などの環境水に含まれるDNAを分析することでそこに生息する水生生物を明らかにする方法である。フィールド調査での作業は水を汲むだけであり、時間や手間を取らず、短時間で多地点の調査や高い頻度での繰り返し調査が可能である。これまでに港湾のような比較的広い範囲において、短時間・多地点の調査を行うことで、局所的な魚類群集の違いを明らかにした研究はある。しかし、時間(季節)ごとに魚類群集の違いを環境DNA解析によって明らかにした研究はほとんど無く、実証的な検証が必要である。
そこで、本研究では京都府北部にある一級河川由良川においてフィールド採水を行い、季節的な魚類群集の変化を環境DNA分析によって研究した。由良川には純淡水魚だけでなく、降河回遊魚であるスズキや遡河回遊魚であるサケも生息し、移動する季節が決っている。したがって、季節的な魚類群集の変動を環境DNA分析によって検出できるかどうかを検証することができる。由良川の8定点において、20ヶ月にわたって毎月1度の1Lの採水を行い、ミトコンドリアの12S rRNA遺伝子を対象とした多種同時検出法(メタバーコーディング法)による環境DNA分析を行った。
その結果、スズキでは5〜10月に河口から中流の広い範囲で検出したが、11月以降には河口を含めどの地点でも検出できなかった。またサケについても10月と11月に広い範囲で検出したが、それ以外にはほぼ検出できなかった。これらの結果は、スズキについては春に接岸して遡上し、秋に川を降下して沖合で産卵するという習性によく一致し、サケについても秋に産卵のために日本海から遡上するという習性に一致する。このように、本研究では定期的な採水調査と環境DNAメタバーコーディング解析によって、魚類の季節的な移動を検出できた。発表では、魚類群集の季節的な変動についてもお話し、環境DNA解析を用いる意義や弱点について議論する。