| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-10  (Oral presentation)

可動サンゴ(ムシノスチョウジガイ属、スツボサンゴ属)の牽引共生者とその更なる同居者

*井川桃子, 加藤真(京大・人環)

イシサンゴ目のチョウジガイ科ムシノスチョウジガイ属とキサンゴ科スツボサンゴ属のサンゴは、砂泥底に生息する非固着性の単体サンゴである。これらのサンゴの骨格内部には渦巻形の空洞があり、そこに環形動物のホシムシが棲み込んでいる。このホシムシがサンゴを引きずって動きまわるとともに砂泥中への埋没からサンゴを救出する一方、サンゴはホシムシに棲み家を提供し、ホシムシを捕食者から防衛していると考えられている。このような可動サンゴとホシムシとの「宿貸し・牽引共生」が、いかに成立し、またどのように維持されているかを明らかにするために、両者の形態や系統関係、生態、行動の観察・分析を行った。
まず、沖縄県金武湾、鹿児島県大島水道、高知県土佐湾よりこれら2属のサンゴを採集し、サンゴとホシムシの形態比較とホシムシの系統解析を行った。系統解析の結果、沖縄県金武湾ではホシムシが2つのクレードに分かれ、いずれのクレードに属するホシムシも2属の可動サンゴ両方に共生していることがわかった。また、それらのホシムシの形態は共生するサンゴの属によって異なり、ホシムシのクレードにかかわらず宿主サンゴの内部構造と一致していた。以上の結果から、ホシムシの形態は可塑的であり、宿主サンゴの内部構造によって決定されていることが示唆された。
これらの調査の過程で、大島水道においては、2属のサンゴにホシムシではなく未記載のヤドカリが棲み込んでいる例が発見された。体も付属肢も著しく細長いこのヤドカリはツノヤドカリ属の新種で、サンゴを牽引するというホシムシの役割を代行しており、これらのサンゴに絶対共生していると考えられる。また、2属のサンゴの空洞には、ホシムシとヤドカリに加えて、さらに多様な同居者が共生していることも明らかになった。


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