| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) D01-12  (Oral presentation)

トンボ幼虫と底生性ミジンコのコンバット:捕食行動に応じた被食防衛

*山田紗友美, 占部城太郎(東北大学大学院生命科学研究科)

 マルミジンコ科など底生性のミジンコ類は、植物間隙や底泥上などに生息しており、捕食性の水生昆虫や魚類にとって重要な餌資源と考えられている。しかし、底生環境の違いによる行動変化や種特異的な防衛行動など、底生ミジンコ類の被食応答は良くわかっていない。そこで本研究では、底生ミジンコ類の捕食者に対する応答やその底生環境の影響を明らかにするため、トンボ幼虫(ヤゴ)に対する底生ミジンコ類の被食率や行動パターンを異なる底生環境下で観察した。
 実験には、被食者として深泥池(京都市北区)で採集したマルミジンコChydorus sphaericus.、シカクミジンコAlona spp.、トゲフトオケブカミジンコllyocryputus spinifer.を、捕食者にキイトトンボCeriagrion melanurum.を用いた。まず行動観察実験では、径35 mmのシャーレにミジンコを1個体入れて実態顕微鏡下で8分間観察し、その間20秒毎にいた場所(上、下)と行動(静止、遊泳)を記録した。次いで、ヤゴに①ミジンコ各種を単独で与えた場合と②各種混合で与えた場合の被食実験を行った。なお、いずれの実験も、シャーレに泥を入れた場合(泥有)と入れない場合(泥無)の2つの底質環境で行った。
 行動観察実験の結果、ケブカミジンコは泥有の場合には泥の中に潜り動かない傾向がみられたが、シカクミジンコやマルミジンコの行動には泥の有無によって差はみられなかった。被食実験では、泥無でシカクミジンコがヤゴに最も捕食され、次いでケブカミジンコ、マルミジンコの順で被食率は低下した。しかし、泥有では泥中に潜行し動きを止めたためケブカミジンコはヤゴに全く捕食されなかった。以上の結果から、ヤゴに対する底生性ミジンコ類の被食率は種間で異なること、その違いは泥中への潜行や静止など、種特異的な被食回避行動により生じていることが示唆された。


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