| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-02 (Oral presentation)
昨年までに演者は、各栄養段階集合中の物質(タンパク)量の捕食・被食・呼吸による流れから、植食・肉食者の生物量を(gタンパク質量/m3生態系体積)等の厳密な物理単位付き量として予測する定量的食物網新数理モデルを考案した(Konno(2016) Ecol. Monogr. 86, 190-214)。本モデルは①見通しが良く肉食者の探索効率が高く②植物が動物に比べ栄養価が極端に低い、陸上(特に森林)生態系では植食・肉食者生物量が100mg湿重/m2程度で植物被食率も年間数%と低い緑のplant-richな生態系が成立するが、地中生態系(探索効率が低い)水圏生態系(植物プランクトンの栄養価が動物並みに高い)サバンナ生態系(ライオンがヌー・シマウマより鈍足で探索捕獲効率が低い)では植食・肉食者の生物量と植物被食率が高いanimal-richな生態系が成立すること、内的増殖率が高い昆虫等が植食者の森林生態系等では植食者より肉食者の量が同等か多い円筒型・逆三角の食物網が出現することなどを定量的に示した。
本講演では、最近Hattonらが示した、被食者と捕食者の関係の3/4乗則なるもの(Hatton et al. (2015) Science 349,aac6284.)に関して本定量的食物網数理モデルからの説明を試みる。Hattonらはアフリカの多くの地点のサバンナ生態系でライオン等の肉食者やヌー・シマウマ等の植食者の生物量を徹底的に調べ、各サバンナ間で100倍程度の生物量・生息密度(植食者肉食者とも)の変動があるなかで、肉食者生物量が植食者生物量の3/4乗に相関すると主張した。この相関関係を本定量的数理モデルで読み解いた結果、類似サバンナ生態系間の生物量変動と植食・肉食者量の相関関係の生成要因として肉食動物の探索捕食効率の生態系間変動の重要性と「3/4乗」という表現の問題点が示唆された。