| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) D02-05 (Oral presentation)
種数や種の分布パターン決定要因を明らかにすることを目的とした群集生態学では、これまで森林の種子食性昆虫や鳥類、岩礁潮間帯、湖やウミガメの体表上などのパッチ状環境に生息する様々な生物を対象として研究が進められてきた。本研究では、首都圏(上野~秋葉原エリア)を中心に点在する2系列のカフェチェーン(S・V)におけるノートPCユーザー(A社製OS・M機とM社製OS・W機)を対象に、両チェーンでの出現記録をまとめ、分布傾向を比較した。
調査は2016年9月から2017年2月まで、1店舗あたり10回以上のサンプリングができた店舗を対象とした。Vでは喫煙席を除外し禁煙席のみを対象とし、両チェーンの条件を合わせた。店内では座席数とそれぞれのPC個体数をカウントした。W機については可能な限りメーカーを同定し、同定の困難な場合についてはW sp.としてそれぞれの個体数を記録した。
本研究で調査地点に出現したノートPCは20種であった(W sp.を除く)。SかVかを問わず、面積(座席数)に応じてノートPC種数が増加し、典型的な種数-面積曲線を示した。累積種数曲線は20回目のサンプリングでおおよそ飽和に達した。また、M機ユーザーの個体数はV・S環境下で明確に違いが見られた。
本研究で対象としたカフェとノートPCユーザーは、座席数を環境収容力、PCのメーカーを種とみなすことができる。利用資源は座席と電源のみという極めてシンプルな競争系で、各チェーンの価格帯の違いを侵入にかかるコストとして定量化することもできる。また、毎年ノートPCシェアが集計されていることから、各種のソース個体群サイズを推定することも可能である。本研究はノートPCユーザー出現傾向による店内の回転率予測や新規店舗開拓のマーケティングへの応用など、これまで群集生態学で議論されてきた成果を社会に還元する可能性を示すものである。