| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) E02-01  (Oral presentation)

育った環境差がオタマジャクシの社会性をカエルのか

*長谷和子(総研大・先導科学)

血縁認識はどこまで協力行動の進化に関わってきたのだろうか.これまで,血縁者を優遇する協力行動を支持する研究は数多く発表されてきたが,個体の備える社会的選好性の遺伝的背景と学習効果を区別した定量的な研究は,殆ど行われてきていない.発表者らこれまで,ヒキガエルの幼生の集合行動の研究において,系統の異なる個体を組み合せた集団でも集合行動をとること,兄弟集団が常に非兄弟集団よりも,集合性が高いわけではないこと,集合性を支配する遺伝的メカニズムも,集団の遺伝的構成(近親者か遠縁者か)により異なる事,を明らかにしてきた.本発表では,社会的選好性の学習効果,すなわち血縁認識の可塑性についての検証を報告する.遺伝的相同性の高い兄弟であっても,学習効果により血縁認識能に差が生じ,それが社会的選好性を変化させる可能性がある.この仮説を検証するため,4通りの異なる飼育環境(水道水またはため池水,あるいは集団育ちか孤立育ちか)で育てたヒキガエルの幼生兄弟の実験群を用意し,66組の行動実験(集合性の測定)を行い,各実験群の比較を行った.同時に,育った環境の違いによって,遺伝子発現に違いが認められるのか,定量的PCRをおこない,主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の発現比較を行った.


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