| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) E02-03 (Oral presentation)
我々人間は,文法規則にしたがって単語を組み合わせ,さまざまな文をつくり会話する。このような言語能力は統語(syntax)と呼ばれ,長年にわたって,ヒトに固有に進化した能力であると考えられてきた。それに対して,私は,鳥類の一種シジュウカラ(Parus minor)が,異なる意味をもつ鳴き声を組み合わせ,より複雑な情報を群れの仲間に伝えていることを発見した。本種は仲間と共に協力してモズやフクロウなどの捕食者を追い払いにかかる際,危険を知らせる声(ピーツピ)と仲間を呼ぶ声(ヂヂヂヂ)を一定の順序に組み合わせて発する(ピーツピ・ヂヂヂヂ)。一連の野外実験から,この組み合わせ音声は,他個体に「警戒」と「集合」の両方の意味を同時に伝えることが明らかになった。さらに,音声の組み合わせには文法規則が存在し,人為的に語順を入れ替えると(ヂヂヂヂ・ピーツピ),情報が正しく伝わらないことも示された。統語はヒトに固有ではなく,一部の鳥類においても独立に進化した言語能力であると考えられる。