| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-05 (Oral presentation)
比較的閉鎖した常緑広葉樹林の林床には光がわずかにしか届かず,樹木の成長と生残には光獲得方法が大きな意味をもつ.光環境に応じた成長様式では,分枝パターンやその積み重ねである樹冠構造,そして同化器官を支持する枝幹の資源配分から読み解くことができる.そこで本研究では日本の温帯林でよく観られ,低木種の樹形と相対成長の種間比較を行なうことから林床における生存戦略を比較解析することを目的に調査を行なった.
調査はつくば市のシラカシが優占する常緑広葉樹二次林の林床で,常緑広葉樹の林床低木の樹形と相対成長の種間比較を行なった.林床低木樹種として対象とした樹種はウコギ科のヤツデとミズキ科のアオキで,高木種のシラカシの稚樹を比較として選定した.調査地から対象樹種を各10個体ほど選別し,各個体の樹冠構造(樹高、枝下高、樹冠幅)と樹高と幹直径 (根元からの樹高一割直径)を測定した.節間成長の軌跡を基に相対樹高成長率を推定した.また,各樹種の樹冠頂部で光量子密度の測定を行ない,全天地と比較した相対光量子束密度を算出した.
その結果,樹高と幹直径,樹冠体積の相対成長を解析では,その傾きの大きさは幹直径,樹冠体積のどちらにおいてもアオキが大きく,ついでシラカシとヤツデとなり、同じ樹高における幹直径と樹冠体積の大きさはヤツデが大きく,ついでアオキとシラカシの順となった。このことから,アオキはヤツデより樹高の成長が個体の成長・肥大化に大きく関わるのではと考えられた.またヤツデは樹高150 cm以上では幹直径と樹冠体積の両方で成長が著しく緩やかになっていた.そのため,下層ではこの高さが成長限界であることが予想された.樹高と相対樹高成長率を比較すると,低木二種はシラカシと比べ150 cm程まで成長率が高いが,そこから樹高成長が低下した.そのため,この階層での光環境で成長生残できるか否かによって,林床植生が形成される過程が示唆された.