| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-06  (Oral presentation)

マリモ球状集合体の群落形成過程の解析

*鈴木祥弘(神奈川大学), 小川麻里(安田女子大学), 中島康成(神奈川大学大学院), 若菜勇(釧路市教育委員会)

北半球高緯度地方に広く分布する淡水棲緑藻類Aegagropila linnaeiは、糸状の藻体(糸状体)からなり、基質に付着した形態、水中に浮遊した形態、集合体などの様々な形態で生活している。中でも北海道阿寒湖では直径が30cm以上に達する球状の集合体(いわゆるマリモ)を形成することが知られている。このマリモの群落構造を解析した先行研究は、様々な大きさの集合体が重なり、同所的に存在すること、群落表層に大きなマリモが卓越することを明らかにしている。本研究では、阿寒湖マリモ群落で、大きなマリモが表層に卓越する特徴的群落構造が形成される原因を、大きなマリモが持つと予想される物理的特性から検討した。
形状を楕円体に近似して求めた扁平率は、測定した長径2~10cmの範囲のマリモでは、大きさに因らずほぼ一定であった。また、マリモの密度は小さなものでやや大きく、300cm3以上で一定となった。沈降速度は小さなマリモで約7cm/s、大きなマリモで約10cm/sとなり、大きなマリモほど沈みやすい傾向が認められた。これらの結果は形状や密度、沈降速度の違いが特徴的群落構造を形成する主要因でないことを示していた。
棲息水域では風波による集合体の移動・回転が生じている。本研究では群落内のマリモの移動が群落形成に与える影響を検討した。マリモを水槽に積層し60回/分の周期で約10cmの振幅で振動を与えた。撮影した写真からマリモの直径と底からの距離を求めて、処理の前後で球状集合体の配列の変化を検討した。その結果、1分間の振動で大きなマリモが浮上し、新たな構造の群落が形成されることが示された。異なる大きさからなる粉粒体を振動した際、大きな粒子が表面に浮き上がる現象をブラジルナッツ効果と言う。本研究は、マリモの特徴的な群落構造の形成にブラジルナッツ効果が強く関与していることを明らかにした。


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