| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) F02-08 (Oral presentation)
交尾相手を獲得するための雄間闘争や求愛行動において有利に働く形質は、雌だけでなく、捕食者をも引き付けてしまうため、捕食リスクの高い環境では、雄の性的形質の発現は抑制される。雌の配偶者選択もまた、捕食リスクの影響を受け、危険を感じる状況では雄の選好基準が甘くなることが知られている。このような交尾前の性選択に与える捕食リスクの効果についてはこれまで数多くの研究がされているが、交尾後の性選択への効果に関してはあまり知られていない。本研究では乱婚でかつ、精子排除による交尾後配偶者選択の存在が確認されているヒメイカを使って、捕食リスクの有無が交尾後の繁殖形質にどのような影響を及ぼすか実験を行った。捕食リスクの異なる2つの地域個体群において、潜在的捕食者であるアナハゼと対面、非対面時に交接させ、射精量、精子排除量、残存精子量を記録したところ、捕食リスクが高い個体群は低い個体群に比べて射精量が多く、雌の精子排除量も多かった。しかし、捕食者の有無に関しては射精量とは関係なく、雌の精子排除量も捕食者がいる時の方が少なくなり、個体群間比較の結果との一貫性は確認できなかった。