| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) G01-03 (Oral presentation)
グッピーは顕著な性的二型を示し、オスでのみ発現するオレンジスポットなどの体色は、配偶者選好性の指標として機能することが知られている。性選択により変異は減少すると予測されるにもかかわらず、オスの体色パターンには著しい多様性があり、それがどのように維持されているかは生態学において重要なテーマとなっている。体色パターンの多様性を維持する要因として、メスが体色パターンに対して負の頻度依存的な選好性 (NFDM:negative frequency-dependent mating) が考えられているが、このNFDMにどのような進化的意義があるのかはわかっていない。メスのNFDMの進化的意義の解明は、体色パターンの多様性の機構の解明に繋がるとともに、進化学の重要なテーマである性選択研究においても重要な意味をもつ。そこで本研究では、メスはまれな体色パターンをもつオスを選ぶことでまれな遺伝子構成をもつオスと交配できるという仮説を示すために、その前提である「体色パターンの違いはゲノムの平均的な違いを反映する」という仮定の検証をおこなった。沖縄本島に生息している11集団でオス個体を採取し、ペアワイズで体色の類似度および血縁度を計算し、集団ごとにこれらの相関関係を調べた。その結果、一部の集団では有意な正の相関がみられたものの、多くの集団では有意な関係はみられなかった。また、オレンジスポットへの反応性が高くなるような色覚をもつ集団では、体色の類似度は血縁度を反映しなくなる傾向がみられた。以上のことから、メスのNFDMのメリットのうち、まれな遺伝子構成のオスと交配できるというメリットは、オレンジスポットが重視されないような一部の集団に限定される可能性が示された。