| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-05  (Oral presentation)

雄性ホルモンレベルと攻撃性における雌雄間の相関した進化

*小北智之(福井県大・海洋), 武田稔(福井県大・海洋), 森誠一(岐阜経済大)

脊椎動物において,雄の適応度に直結する行動的・形態的な性的形質の発現は,雄性ホルモン(アンドロゲン)依存的であることが少なくない.したがって,野外における性的形質レベルの適応的変異は,アンドロゲンの感受性・応答性に加えて,アンドロゲンレベル自体の遺伝的(または可塑的)変異によって創出されていると考えられる.一般に,アンドロゲンレベルの増大には生理・免疫コストが存在するため,雄のアンドロゲンレベルは繁殖システムの変異や生態的条件の変異と関連して進化することが予測されている.しかし,アンドロゲンは雌にも存在しており,アンドロゲンレベルを決定する遺伝的背景が雌雄で共通している場合,雄自身の生存と繁殖のトレードオフに加えて,遺伝子座内性的対立がアンドロゲンレベルの適応進化に影響するかもしれない.
 このような問いにアプローチするために,行動生態学のモデル魚類であり,進化ゲノミクスのモデル系としても有名なイトヨ類を対象に,異なる繁殖システムを示す集団間に存在する雄のアンドロゲンレベルの適応的分化に着目した. まず,QTLマッピングを用いて,アンドロゲンレベルにおける雌雄間の遺伝相関を検討したところ,集団間で雌雄の相関した進化が検出された.さらに,雌において,攻撃的干渉や性行動発現などの繁殖行動形質における集団間変異パターンは,雄の集団間変異パターンと同様の傾向を示すこと,このような変異はアンドロゲンレベルの影響を受けていることも判明した.このような雌の行動形質におけるアンドロゲン依存的な変異が野外において適応的であれば,雌雄のアンドロゲンレベルは性的に共進化しやすい可能性がある.


日本生態学会