| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-09  (Oral presentation)

幼若ホルモン量により制御される密度依存的な翅型決定の進化

*上岡駿宏, 巌佐庸(九州大学)

翅多型における生理学的な研究では、幼若ホルモンが翅型決定において重要な役割を果たすことが示されてきた。ところが、環境条件によってどのような幼若ホルモン制御が進化するかについては明らかでない。そこで、筆者らは、翅多型昆虫における幼若ホルモン制御の進化に関して数理モデルによる研究を行った。モデルでは以下のことを仮定した。単為生殖する幼虫と成虫が複数のパッチに生息する。幼虫の成長率はパッチ内の資源量に依存し、それは幼虫の摂食により消費される。移動型成虫は、繁殖ステージの前に出生したパッチから移動する。一方で、繁殖型成虫は移動しないが、移動型よりも大きい繁殖力を持つ。2つの翅型の比率は幼若ホルモン量により決定される。これは、平均が幼虫時に経験した密度(単位資源当たりのバイオマス)により減少する正規分布に従う。資源の環境収容力は高い値と低い値の間を変動する。筆者らは、幼若ホルモン量を制御する3つの量を進化させた:[1]平均の基底量γ0、[2]平均の密度応答性γ1、[3]分散σ2。σ2を固定してγ0とγ1を進化させたとき、幼若ホルモン生産は低密度時に高くなるが、密度増加により減少することが示された。γ0とγ1を固定してσ2を進化させたとき、σ2は環境変動が大きいほど小さく進化した。3つの量(γ0, γ1, σ2)を同時に進化させた時、環境の変動性が大きい条件でσ2は最小値に収束した。全てのケースで、移動型率は経験した密度とともに加速的に増加するように進化した。また、進化した環境の変動性が大きいほど、密度増加により移動型率が増加しやすくなることが示された。また、昆虫の成長率と死亡率、資源の回復力は、平均の密度応答性の進化に影響を与えることで、移動型生産の密度応答性に影響を与えることが示された。


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