| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-07  (Oral presentation)

アリ随伴アブラムシ共生細菌ブフネラのアミノ酸代謝遺伝子にかかる選択圧と強度

*八尾泉(北大・農・昆虫体系)

カシワの葉に寄生するTuberculatus macrotuberculatusは,アリ随伴下で甘露排出頻度が増加し,吸汁した篩管液のアミノ酸を未吸収のまま甘露に流入させていることが示唆されている。T. macrotuberculatus単一種で示唆された,随伴アリの有無によって増減する篩管液流入量の現象は,アリと共生する/共生しないアブラムシ種の種間比較にも適用できると考えられる。アブラムシは共生細菌Buchnera(ブフネラ)にアミノ酸代謝を依存しているので,Buchneraのアミノ酸代謝機能にかかる選択圧の程度もアリ共生タイプによって異なるのではないかと考えられる。この研究では,Tuberculatus属アブラムシ23種(アリ共生型11種と非共生型12種)を対象に,Buchneraのアミノ酸代謝関連遺伝子にかかる選択強度と進化速度を比較した。アミノ酸代謝関連の4遺伝子(ilvD, leuC, TrpB, TrpE)について, dNdSの比dN/dS (=ω)を推定した。さらにアリ共生種クレードと非共生種クレードの各ωを算出したモデルと,系統樹内の全枝で進化速度一定とするモデルとの尤度の差を,カイ二乗テストで検定した。その結果,ilvD遺伝子に対してのみ,アリ共生・非共生クレードのωを算出したモデルが有意に高かった。


日本生態学会