| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) G02-10 (Oral presentation)
共生関係は、ホスト種とパートナー種が互いに利益を与え合うことで成り立っている。共生関係に関する先行研究の多くでは、より利益的なパートナーの選別や利益的ではないチーターの排除といった、この関係を維持している生理的・生態的メカニズムを明らかにしてきた。このようなメカニズムが働くことによって、チーターは淘汰され、パートナーの遺伝的多様性が減少することが予測される。しかし、実際の自然環境下において共生パートナーの普遍的な遺伝変異が明らかにされている。さらに、この変異は大きく、利益的なパートナーだけではなく、時に不利益を生じさせるパートナーもみられる。このように共生パートナーの大きな遺伝変異によってホストに対する利益が異なっているが、同時に、ホスト種自身の遺伝変異によってもホスト種が受ける利益は異なる。そのため、共生利益における変異の実態を解明するためには、双方の遺伝変異に着目する必要がある。日本全国で広くみられるケヤマハンノキは、比較的小さな空間スケールでも多様な遺伝変異がみられる。このハンノキにおける遺伝変異が生み出される要因の一つとして、ハンノキ属の共生細菌であるフランキアに着目した。ハンノキ遺伝子型とフランキア遺伝子型の異なる組合せによって、共生相互作用の帰結が異なることで、双方の遺伝変異が維持されていると考えた。このことを検証するため、まず野外複数地点から採取したフランキアの遺伝解析を行い、一部の菌体を単離培養した。次に培養細菌を異なる母樹由来のハンノキ実生に接種し、共生関係の組合せ操作実験を行った。その結果、比較的小さい空間スケールでもフランキアの遺伝変異がみられた。さらに、フランキアの遺伝変異が及ぼす効果はハンノキ集団ごとに異なることが示唆された。このことから、ホスト遺伝子型とパートナー遺伝子型の組合せの相性により、互いの遺伝変異が維持されている可能性が考えられる。