| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-12  (Oral presentation)

季節の分割と進化的ドリフト:季節適応の進化動態

*佐々木顕(総研大)

熱帯降雨林のハチドリが媒介する植物11種が、その開花時期を1年の中ですこしずつずらすように共存する事例は、多くの生態学の教科書に引用されるような古典的な例である(Styles 1977)。しかしながら、与えられた環境の季節変動のもとで、資源をわけあう競争種がお互いの季節適応の時期を進化させるとき、どのような季節分配パターンが共進化するのかという問題に対する理論的な検討は遅れている。ここでは、開花時期のような季節適応の形質が進化形質であるとき、どのような進化が起こるかを、侵入可能性解析、oligomorphic dynamics, およびシミュレーションで解析する。
 まず、ある季節選好性をもつ種からなる単独種群集に、異なる季節選好性を持つ種が侵入可能かどうかを考える。内的増加率がそれぞれの種で異なる季節にピークをもつような正弦波であるような競争系を考え、既存種の季節適応の位相に対して、侵入を試みる種の季節適応の位相がどこにあれば侵入に成功するかを解析すると、既存種の季節性のピークから遅れた時期にピークを持つ種が必ず侵入できることが明らかになる。
 モデルを発展させ、季節適応時期(一年の中で環境収容力がピークを持つ位相)を連続形質として、さまざまな位相をもつ多数の種からなる群集の動態を解析すると、群集の平均位相が進行波になることを示すことができる。この進化動態の挙動を決めるキーパラメータは、z = (季節適応の位相に関する遺伝分散)x(増殖率の季節性の大きさ)で、これが閾値zc=1よりも大きければ、位相を分け合うすべての種が共存し、平均位相は一年で一周して元に戻ってくる。しかし、このパラメータzが閾値より小さいと、進化的な位相漂流が生じる。群集はほぼ単独種からなり、その平均位相は周期2pi/(1-sqrt(1-z^2))年をかけて季節を循環した後、元に戻ることを繰り返す。


日本生態学会