| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-05  (Oral presentation)

新第三紀遺存針葉樹スイショウ・メタセコイアの現在と鮮新・更新世の生育立地の比較

*百原新(千葉大学大学院), 山川千代美(琵琶湖博物館), Yongchuan Yang(重慶大学), Cindy Tang(雲南大学)

ヒノキ科のメタセコイアとスイショウは,古第三紀には北半球の中~高緯度地域に広く分布していたが,新第三紀から第四紀初頭にかけて東アジアの一部に分布域が限定された遺存的針葉樹である.中・西部日本では,メタセコイアは約90万年前,スイショウは約120万年前までの河川後背湿地の地層から化石が産出する.両種の化石は滋賀県中部の260万年前と170万年前の古琵琶湖層群の地層から,埋没樹幹を伴って産出する.そこでの堆積相と種実化石群の組成からは,スイショウは後背湿地の帯水域を中心にカヤツリグサ科草本などの抽水・湿性植物とともに群落を構成していたと考えられ,メタセコイアは中湿の自然堤防の上に主に分布していたと考えられる.メタセコイアよりもスイショウがより過湿な立地に分布していたことは,現在の両種の中国での生育環境と一致する.メタセコイアの現在の自生個体群は,湖北省西部利川市忠路(標高900~1400m)にのみ分布する.そこでは小さな谷の川沿いに分布し,根を流水の中に伸張させているが,株元の位置は水面から50~100cm上に位置していた.一方,スイショウの自生個体群は中国南部の福建省,湖南省から広西自治区にかけてと,雲南省,ベトナム南部に分布し,河川の氾濫原の過湿な立地に生育し,地表に気根を発達させている.福建省中部から北部の山地域の河川の上流部(屏南縣嶺下,周寧縣浦源,尤溪縣台溪および湯川,標高800~1300m)には,比較的まとまった自生個体群が分布する.これらの個体群では,泥炭が堆積する過湿な谷底面に10数~数10本のスイショウが分布し,数cmから約40cmの高さの気根を発達させていた.林床はヌマガヤ,ヤマドリゼンマイ,チゴザサ,オギといった湿性草本で構成されており,実生は林分外の林冠のあいた場所に分布し,浅い水たまりにも見られた.


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