| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) H02-03 (Oral presentation)
ヒバは日本産の遷移後期樹種の中でも最も耐陰性が高いと考えられている樹種の一つである。多くの樹種は,光が不十分な環境下では,成長に伴って増加する非同化部による消費を,光合成産物で補償できなくなる限界があり,個体サイズの増加に伴い,より強い光が必要になると考えられる。しかし,ヒバは樹高成長がほとんどできない状態で,複数の枝で伏条し,それぞれが発根部より後方の非同化部から独立することで,ラメット単位で数の増加をはかる,つまり若返りを図りつつ無性繁殖を行って水平的に空間を占有するという戦略をとっていると考えることができる。そこで, 86 年前時点でブナ林冠下にヒバの稚樹が存在した場所で,現在でもその状態が維持されている場所に試験地を設定し,個体識別のためのDNA分析(EST-SSR 分析)を行い,各個体のラメット数(幹数)や空間的な広がりなどを調べた。これまでに,10m(等高線に垂直方向)x 30m(等高線に平行方向)の範囲内で調査を行い,一つの個体(ジェネット)がこの10m(等高線に垂直方向)の範囲を超えて存在している例を報告した。本研究では、調査範囲を20m x 30mまで拡張し,それぞれのジェネットが占めている水平的な広がりの範囲,1ジェネットあたりのラメット数,相対照度とラメットの根元直径との関係などについて明らかにする。