| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) H02-06 (Oral presentation)
植物において種多様性を生み出す要因の1つは種間雑種形成や倍数体化であり、その過程を理解することは植物における多様性創出メカニズムを明らかにする上で重要である。日本産エンレイソウ属植物は、オオバナノエンレイソウ(2倍体)・ミヤマエンレイソウ(4倍体)・エンレイソウ(4倍体)の3種を基本種とし、それらの種間雑種形成、さらにはその倍数体化による稔性獲得を通じて種分化が生じている(Kurabayashi 1958)。本研究で注目しているコジマエンレイソウ(6倍体)も、オオバナノエンレイソウとエンレイソウの種間雑種が倍数体化したものである(Kubota et al. 2006)。また本種の雑種形成時には、種子親が必ずオオバナノエンレイソウとなる一方向性の雑種形成過程が生じることが明らかにされている。これまで発表者らは北海道の複数集団を対象に、その系統関係および集団形成過程を推測する為に種子親オオバナノエンレイソウも加え、葉緑体DNAを用いた系統解析を行ってきた。その結果、コジマエンレイソウは異なる複数系統のオオバナノエンレイソウが種子親になり形成されたことが明らかになり、集団によって起源が異なることが示されている。今回は、新たに青森、秋田などの複数の集団を加えて系統解析を行い、日本列島におけるコジマエンレイソウ集団形成について明らかにすると共に、多様な形質を示す花器形態(雄蕊、雌蕊幅および長さ、子房の色など)について集団間の比較を行った。系統解析の結果、青森、秋田の集団はほぼ同じ系統に属することが明らかになり、東北地方に現在生育するオオバナノエンレイソウの1系統から形成されたことが示唆された。また、東北地方に生育する集団の花器形質の特徴として、北海道の集団のものと比較して雌蕊が小型でより丸みを帯びており、すべての個体が子房の色が黒であるクロミノコジマエンレイソウタイプだった。