| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-09  (Oral presentation)

草は木よりも長く咲く: 146種の野外観察と系統樹に基づく種間比較

*川窪藍(九州大院・システム生命), 矢原徹一(九州大・理)

植物の開花期間には、数日から数か月まで大きな種差がある。このような種差を木本・草本間で比較するために、九州大学伊都キャンパス生物多様性保全ゾーンの木本・草本植物144種について2015年4~7月、2016年3~7月に、開花フェノロジーを記録した。その結果、草本種の方がより長く咲く傾向が観察された。この違いについて、rbcLmatK配列に基づく系統樹を利用し、統計的に独立な量とみなし得る対比(種分化において生じた差)による検定を行った。末端の種の形質状態と系統樹にもとづいて各枝での祖先的形質状態(生活形と開花期間)を復元し、各種分化イベントにおける対比を求めた。生活形の対比を「木本-木本」、「木本-草本」、「草本-草本」の3つのカテゴリーに分け、それぞれのカテゴリー間で開花期間の対比に有意差があるかどうかを検討した。その結果、開花期間の対比は、「木本-木本」が「草本-草本」に比べ、有意に小さく、「木本-木本」と「木本-草本」、「木本-草本」と「草本-草本」には有意差が見られなかった。この結果は、木本での種分化に比べて、草本の種分化では、開花期間が多様になる傾向があることを示している。この違いは、木本と草本の間におけるポリネーターの利用度の違いや資源分配戦略の違いに起因する可能性がある。


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