| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I01-01  (Oral presentation)

トドマツ新植造林地におけるトドマツオオアブラムシと随伴アリの関係

*佐藤重穂(森林総合研究所北海道支所), 尾崎研一(森林総合研究所), 稲荷尚記(森林総合研究所北海道支所), 佐山勝彦(森林総合研究所北海道支所)

トドマツオオアブラムシ(以下、アブラムシ)はトドマツ苗木の害虫で、そのコロニーには数種のアリが随伴する。北海道ではトビイロケアリとハラクシケアリの2種がよく随伴するが、トビイロケアリは土莢と呼ばれる土の壁でトドマツ苗木の主幹を覆って他のアリからアブラムシを独占するのに対し、ハラクシケアリは土莢をほとんど作らない。また、トビイロケアリは皆伐地などの開けた環境に多く、ハラクシケアリは林内に多い。そこで、伐採時に広葉樹が保残されたトドマツ新植造林地において、アブラムシの個体数が随伴するアリの種類によって異なるかどうか調べた。調査は芦別市と赤平市に位置するトドマツ人工林保残伐実験区で行い、皆伐区、保残木の量の異なる少量保残区、中量保残区、大量保残区および伐採しない天然林区の5種の実験区に、予めアブラムシのコロニーを定着させたトドマツ苗木を各10本設置した。苗木へ来訪するアリの随伴状況を記録して、1か月後に苗木を回収した。2014年に伐採した実験区では2015年と2016年に、2015年に伐採した実験区では2016年に試験を行った。その結果、90%のトドマツ苗木にアリが随伴した。天然林区ではハラクシケアリの割合が高く、皆伐区と各保残区ではトビイロケアリとハラクシケアリの2種のアリがみられたが、保残量との関係は明瞭ではなかった。トビイロケアリが随伴した苗木ではアブラムシの個体数は1か月後に増加又は維持されていたが、ハラクシケアリが随伴した苗木はアブラムシが減少し、アリの随伴していない苗木ではアブラムシはほとんどいなかった。この関係はいずれの実験区でも同様であった。アブラムシの個体数はばらつきが大きく、保残量との間に一定の関係はみられなかった。以上から、トビイロケアリが随伴すると土莢によってアブラムシを天敵から保護する効果が高く、アブラムシの個体数が維持されるものと考えられた。


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