| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-01 (Oral presentation)
20世紀中に世界各地の湿地の6割~9割が農地転換によって失われた。そのため、湿地が担っていた洪水調節サービスは、人工堤防や遊水地の建設、河道掘削による流路の拡幅などによって補われてきた。中でも遊水地は、かつて氾濫原であった立地に計画されるため、構造によっては湿地の再生、地域の生物多様性保全につながる可能性を秘めている。しかし、これまでに十分な検証は行われてこなかった。そこで、北海道千歳川流域に整備された舞鶴遊水地(200 ha, 2015年度から供用)において遊水地で湿地植生が成立する過程を明らかにした。周囲定内部の湿潤~湛水環境にあるほぼ全域(敷高4.1 m以下)を対象に、2 m×2 mの方形区を50 m以上の間隔で51地点設置し、維管束植物種の種名と被度、水位、表面水のEC、DO、pH、Eh、土壌間隙水のEhを測定した。掘削からの経過年は施工図面から読み取った。生育型による種の分類、TWINSPANによる植物群落の抽出、群落間で有意差が認められた環境要因と種組成データを用いて正準対応分析(CCA)による方形区の序列化を行った。出現した種は21種(湿生植物16種、陸生植物5種)、全て在来種であった。TWINSPANの結果、ヨシ群落、マコモ群落、フトイ群落、ウキヤガラ群落、ウキヤガラ‐ヒシ群落の5つに分けられ、表面水のDO、水位、掘削からの経過年に群落間で有意な差が認められた。CCAの結果、2軸が抽出され、ウキヤガラ‐ヒシ群落は経過年に関わらず水位およびDOが高い場所に成立し、その他の抽水植物群落は水位やDOのより低い場所に成立していた。掘削からの経年に伴い、ウキヤガラ群落からマコモ群落、フトイ群落、ヨシ群落へと遷移していた。