| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-05  (Oral presentation)

資源利用を介した生態系と人間活動の相互作用の多様性と類型化の試み

*石井励一郎(総合地球環境学研究所)

人間による生態系の利用形態や持続性への影響は、生態系の特性と資源利用の特性によって変化する。これまでに発表者は、生態系の資源の生産と分布パターンに応じて、熱帯林型と草原型の2つのタイプがあることを特定した。これらはそれぞれ食物網上の消費者間の種間関係とのアナロジーから、熱帯林型は地域住民と企業体が生態資源をめぐって“競争関係”にあり、草原型は両者が“被食者-捕食者関係”に共通する特性を持つ。さらに一般化のために生態系の資源利用ネットワークを[植生][地域住民][企業体]の3要素から整理し、森林、草原以外に、サバンナ生態系、湖沼、海洋沿岸、沖帯の各タイプの生態系について、類型化をおこなう。系間相対化する比較軸として、生態資源の生産性と分布パターン、[地域住民]の居住様式と資源獲得コストから相対化することで、異なる生態系間で生態資源の利用と持続性に関する共通点と相違点の考察、理解が深まる。例えば海洋生態系では、植物プランクトンが主に一次生産を担う沖帯生態系は生物資源分布特性に関しては熱帯林よりも草原により類似、伝統的利用法も直接利用ではなく、食物連鎖の高次栄養段階の魚類(家畜に対応)のバイオマスに濃縮されたものを利用する点で類似する。一方機械化による資源獲得コスト減が与える影響に関しては、海洋沖帯は熱帯林との共通性を示す。沖帯では資源獲得コストが高いため過剰な利用が困難であったが、高速移動と大量輸送が可能な漁船の導入がこのコストを下げ近年の大型魚類の資源枯渇を引き起こしている様は熱帯林の伐採が機械化と道路開発により急激に進んでいる現象と同根であると考えられる。今後はこの類型化に基づいた数理モデルの構築と解析から、生態系特性に応じた持続的利用条件の検討に用いることを検討している。


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