| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-07 (Oral presentation)
生物多様性の保全には、動物の生態を把握する必要がある。そのために研究者は生態の調査に多大な労力と費用を費やしており、調査の効率化が課題となっている。そこで、ICTの利活用による効率化を目的に、捕食関係に着目し、植生データから草食動物の嗜好エリアを予測する技術を開発している。
本技術は、国土交通省国土地理院の基盤地図情報データ(http://fgd.gsi.go.jp/download/menu.php)をベースに、植物の種類や分布を示した環境省自然環境局の自然環境保全基礎調査の植生調査データ(http://gis.biodic.go.jp/webgis/sc-023.html)と、新たに作成した動物の生態情報データベース(地形、食草、体重などの情報)をマージして解析するシミュレーション技術である。本技術により、動物の嗜好エリアを日本全国で算出することが可能である。
今回、ニホンジカを事例に、本技術の検証を実測データと比較することにより行った。検証には、山梨県内の調査エリアにおける生息調査データ(2008年、 2011年)を用いた。その結果、地形条件に生息地の植生条件と嗜好性植物の情報を追加することで、調査エリアにおける予測と実測のデータ間で、動物存在の有無や大小関係の相関が強くなり、嗜好エリアの予測精度が向上した。
生態の調査に関わる研究者は、本技術を用いて、事前解析により適切な調査エリアを決定したり、調査が困難であった未調査エリアにおける生息を予測したりすることが可能になり、調査の効率化が図られると考えられる。