| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) I02-10  (Oral presentation)

ボウフラの捕食回避行動の観察とその教材化

*大庭伸也, 野稲充(長崎大学教育学部生物学教室)

すべての生物は必ず他種と何らかの関係を持って生活している。その例として代表的なものが捕食者と被食者の関係であり、生物の進化を理解する上でキーとなる種間関係の一つである。しかしながら、現在の小学校~高校の理科では、その関係について実物を用いる教材は提案されておらず、ICT機器や写真の活用が主である。本研究の目的は、児童や生徒の興味・関心を引き付けるような行動観察ができる生物教材を検討することである。
今回は学校現場でも身近な昆虫であり、社会的な関心が高い蚊を教材候補として用いた。蚊(カ科)は種によって竹の切り株から水田や溜池に到るまで様々な大きさの水域で繁殖する水生昆虫である。淡水生態系の中では多くの蚊の幼虫(ボウフラ)は天敵(魚類や水生昆虫)に捕食され、成虫になる前に死亡する。そのため、ボウフラは自身の生存率を上げるために天敵のキューを感知すると、見つからないように活動性を抑制すること(捕食回避行動)が知られている。さらにその程度は、種によって異なる。
演者らはボウフラの捕食回避行動の観察が、捕食者と被食者の関係やそれらの共進化を考察する生物教材になることを期待し、小学~高等学校の児童や生徒向けの教材化に向けた研究を行っている。本講演では、本州~沖縄県までの学校現場で採集されるアカイエカ種群3種(アカイエカ、チカイエカ、ネッタイイエカ)およびヒトスジシマカのボウフラを対象にして、天敵(メダカ)のキューに対する行動への影響を調べた。また、専門的に記録するボウフラの捕食回避行動を児童や生徒向けに、より簡便な観察法で実施した場合の結果についても報告し、ボウフラの行動観察を理科教材として用いることの有用性と課題についても考察する。


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