| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) I02-11 (Oral presentation)
保全生態学的な研究において、限られた時間の中で、広域かつ大量のデータを収集するには、市民参画型の調査が大きな力を発揮する。この枠組みは、参加者の知識や意識の向上も同時にもたらす。我々が沖縄で取り組む陸域環境モニタリング研究「OKEON美ら森プロジェクト」。本プロジェクトにおいても、試料やデータを共有し、利活用する社会ネットワークの醸成を大きな柱と位置づけている。地元の高校は、その中でも主要な連携相手のひとつである。これまで高大連携というと、大学側の学生確保や地域貢献、生徒の進路指導、または高大の教育連携という視点から語られることが多く、出前授業や高校生による大学の授業受講、大学研究室への生徒受け入れといった取り組み事例が一般的だ。そこからは、当研究プロジェクトが必要とする、沖縄の環境データ収集と地域に根ざした人材育成を両立し、さらに自立的・持続的に機能する取り組み例を見つけるのが難しかった。
そこで、「OKEON美ら森プロジェクト」では、沖縄において、新しい高大連携の形を模索し、実践している。(1)研究者側から調査プロトコルを含むアリ類調査パッケージを提案し、(2)教員へのワークショップや研究指導スキル向上研修を実施、必要に応じて実践を補助し、(3)それぞれの参加校では、指導教員が中心となり、科学研究実践活動の一環として研究を遂行、(4)研究において採集された標本を研究者側と共有、という仕組みである。これにより、研究者には、市民科学同様、一定のプロトコルに従った調査網をもたらす。教員側には、科学研究実践活動運営に必要な研究指導技術の向上を。そして生徒は、より質の高い科学研究実践活動を行えると同時に、プロジェクトとの関わりを知ることで、より大きな視点で保全研究を捉えることができる。本発表では、これまでの取り組みを通して見えた、成果と今後の課題を議論したい。