| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-02 (Oral presentation)
モンゴルでは1990年の民主化以降、家畜数が飛躍的に増加し、過放牧による草原の劣化が問題になっている。家畜数の増加は野生草食動物にも影響を与えていると予想され、食性の類似度が高いほど影響が大きいと考えられる。そこで、家畜と野生草食動物の食性の種間差を明らかにすることを目的とした。2014年6月にモンゴル南部で野生草食動物2種(モウコガゼル、アジアノロバ)と家畜4種(ヤギ、ヒツジ、ウマ、ラクダ)の計6種の糞を採集し、次世代シーケンサーを用いたDNAバーコーディングに基づく分析を行った。その結果、合計25科(39属、18種)の植物が同定され、従来の顕微鏡による糞中未消化物分析に対する本手法の優位性が示された。採食された植物種の多様性はヤギとヒツジで高かった。モウコガゼルと食性の重複が高かったのはヤギ、次いでヒツジであった。アジアノロバと食性の重複が高かったのはウマで、次いでヒツジ、ヤギであった。モウコガゼルとヤギ、ヒツジの間、アジアノロバとウマの間の高い食性重複の要因は、類似した体サイズと同じ消化システム(反芻動物:モウコガゼル、ヤギ、ヒツジ;非反芻動物:アジアノロバ、ウマ)が考えられる。アジアノロバとヤギ、ヒツジの高い重複率は、ヤギ、ヒツジの採食種の多様性の高さが要因だと考えられる。家畜数の増加はヤギで顕著であり、モウコガゼルやアジアノロバとの高い食性重複を考慮すると、資源をめぐる競合が強まることが懸念される。