| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-08 (Oral presentation)
野生動物に観察される傷跡は、捕食者から攻撃を受けたことの確実な証拠になる。そのため、傷跡頻度は被食強度の指標としてしばしば利用されてきた。しかし、その信頼性は理論的にも実践的にも厳密には検証されていない。そこで私たちは、野外調査と室内実験を組み合わせたアプローチによる、傷跡頻度から被食強度を推定するための新しい枠組みを考案した。また、ヘビからの攻撃に対して特異的に自切行動を起こすカタツムリを用いることにより、モデルの検証をおこなった。その結果、カタツムリの生活史を正確に再構築できることが実証され、成熟前の総死亡率の約半分がヘビの捕食に起因すると推定された。我々のモデルはさらに、パラメータの幅広い組み合わせが一定の傷跡頻度に帰結しうることを示し、傷跡頻度が個体群間で異なる場合の生態学的な過程の解釈には注意が必要であることを明確にした。この研究は、現代的な群集生態学から取り残されつつある自由生活者の生活史研究において、実践的なツールを提供するものである。