| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) J01-11 (Oral presentation)
外来生物が移入地に定着し分布を拡大するためには、移入地の環境に適応しなければならず、その過程で特性が変化することがある。外来生物に対する的確な対策を講じるためには、外来生物が新たな環境に適応・進化する過程とその機構を解明することが重要である。北米原産の外来昆虫であるブタクサハムシは、1996年に千葉県で発見された後、急速に分布を拡大した。このように急速に分布を拡大したため、本虫の移入時の生活史特性は、各地域の気候や寄主植物のフェノロジーに適しているとは限らず、移入後に生活史特性が変化する可能性がある。ブタクサハムシは、短日により成虫の生殖休眠が誘導される。演者らはこれまでに、本虫の休眠誘導に関する光周性が、日本に移入後短期間に変化したこと、全国各地で採集した系統について地理的変異があることを報告した。急速な光周性の変化を生じた遺伝的機構を明らかにするため、人為淘汰実験を行った。休眠を誘導する臨界に近い日長(13L:11D)において、本虫3系統それぞれに対し、休眠と非休眠の両方向に淘汰をかけた。その結果、5~8世代で休眠率が0%(非休眠淘汰)または100%(休眠淘汰)に達した。遺伝様式をポリジーン系の閾値形質と仮定して推定した実現遺伝率は、0.208~0.856となり、遺伝変異の大きいことが示された。また、休眠系統と非休眠系統を交配して、子の休眠率を調べた。休眠系統では、次の世代を得る前に休眠を打破する期間が必要であるため、休眠・非休眠系統間の交配では、休眠系統の方が淘汰世代数が少ない。淘汰世代数の差が大きいほど、子の休眠率が低くなった。このような結果を生じた機構について考察する。