| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(口頭発表) J02-06  (Oral presentation)

止水性トンボを用いた保全上重要な生息地とその指標種の特定

*境優, 須田真一, 桶田太一, 鷲谷いづみ(中央大学)

奄美大島の10か所のため池においてトンボの出現種数と生息地環境(森林被覆率、抽水・沈水・浮葉植物被度、池面積、NO3-濃度、COD、外来捕食者(ティラピア)の有無)の調査を行った。本研究では6科26種のトンボが確認され、最も多いため池で22種、最も少ないため池で8種となる入れ子状のトンボ群集が見られた。出現種数が特に多かったため池で確認された種は(希少種)、クロスジギンヤンマ、コフキヒメイトトンボ、ハネナガチョウトンボ、マルタンヤンマ、リュウキュウトンボ、オオハラビロトンボ、オオキイロトンボの7種であった。これらの希少種は、抽水植物が繁茂する水面を好み、クロスジギンヤンマ、マルタンヤンマ、リュウキュウトンボ、オオハラビロトンボは加えて周辺の森林に被陰された環境も好む。一方、すべてのため池で確認された普通種は、アオモンイトトンボ、ウスバキトンボ、ギンヤンマ、タイワンウチワヤンマ、ハネビロトンボの5種であった。これらの種は、開放水面を好む習性が知られている。以上のような希少種と普通種の習性の違いは、森林被覆率と抽水植物被度がトンボの出現種数に正の効果をもたらす統計モデル結果によく反映されていた。本研究では、トンボ群集の入れ子構造と生息地環境に注目し、奄美大島における保全上重要な生息地(森林に覆われ、抽水植物が繁茂するため池)と保全・再生のモニタリング種(希少種)を具体的に抽出することができた。


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