| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(口頭発表) J02-08 (Oral presentation)
【目的】わが国最大のサンゴ礁海域である石西礁湖および石垣島と西表島沿岸のサンゴ群集は、高水温によるサンゴ白化現象や捕食者オニヒトデの大量発生など多くの撹乱を受けている。また、古くは1983年から、現在は環境省モニタリングサイト1000の一環としてモニタリングが継続されており、サンゴ群集の長期的動態がわかる貴重な海域でもある。本発表では、環境省が公表しているモニタリングデータの解析からサンゴ被度変遷の傾向を分類し、その要因を明らかにする。
【方法】2000年から2013年まで、石西礁湖102地点、石垣島73地点、西表島19地点で、年に1回行われた定点観測調査のデータを解析した。使用した観測項目はサンゴ被度、サンゴ生育型、優占種ミドリイシ類サンゴ新規加入数、白化率(白化したor白化後死滅したサンゴの割合)、オニヒトデ個体数、台風被害である。各調査地点のサンゴ被度の増減パターンを時系列クラスター解析によって分類し、各グループのサンゴ被度、新規加入数と撹乱要因の平均的振る舞いを明らかにした。
【結果】時系列クラスター解析の結果を検討し、サンゴ平均被度の年変化パターンを6グループに分類した。グループ1:高被度(40%—60%)、グループ2:中被度(20%—40%)、グループ3:回復失敗、グループ4:急増加、グループ5:低被度(<20%)、グループ6:高被度安定(>60%)。平均被度および各撹乱要因の年変化パターンの比較から、グループ3は2007年の大規模白化により被度が減少した後、新規加入減少とオニヒトデ大発生の影響を受けて被度が回復していない地点だと考えられた。グループ3は全地点の約31%を占めており、石西礁湖中南部と石垣島周辺に多く見られた。今後は、サンゴの回復過程に影響を与える物理的、生物学的要因をより詳細に検討する必要がある。