| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-A-022  (Poster presentation)

在来種と外来種が混在する自然群集における植物種数と多機能性の関係

*高木勇輔(横浜国大・環境情報), 岡田慶一(横浜国大・環境情報), 小林真(北大・FSC), 藤井佐織(アムステルダム自由大), 森章(横浜国大・環境情報)

 草原生態系をモデルとした生物多様性と生態系機能の関係性は,これまでに数多くの操作群集で研究されており,近年の研究では複数の生態系機能を同時に考慮すると,複数の機能を考慮しない場合に比べて生物多様性の効果はより大きくなるという多様性と多機能性の関係が報告されている.一方で,外来種の混在した草地群落は近年拡大しているが,地理的由来の異なる外来種と在来種では,多様性が生態系機能に及ぼす影響に違いがあることが指摘されている.本研究では,先行研究に乏しい自然群集において在来種と外来種を区別して植物種数と多機能性の関係性を検証した.
 2015年7月,北海道北部に位置する北海道大学天塩研究林の草原に調査地を設定し,植物種の種組成を記録した.また,生態系機能の指標として,地上部バイオマス,リター堆積量,地下部バイオマス,初期分解速度k,土壌無機態窒素量,土壌炭素量,土壌呼吸速度の計測を行った.また環境要因として土壌含水率とpHを測定した.群集全体で自然草原における環境の差異を考慮しつつ植物種数と多機能性の関係を解析した.同様の解析を,在来種,外来種それぞれについても行った.
 群集全体で植物種数と多機能性は有意な正の相関関係を示した.自然群集において,植物種数と多機能性に正の関係性が見られたことは,操作群集における同様の先行研究の結果と一致している.また,記録された在来種は12種,外来種は10種であった.群集全体と同様に,在来種数と多機能性も有意な正の相関関係を示した.一方で,外来種数と多機能性は有意な正の相関関係を示さなかった.これは,同所的に適応や淘汰を経て形成された在来種では種間での相補性が強く発揮されるが,移入して間もない外来種群集ではその効果が弱いことを示唆する.このことから,生態系機能の維持を図る上では,在来種群集を保全しながら生物多様性の保全を行う必要があると示唆された.


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