| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-A-023 (Poster presentation)
多種共存の仕組みの解明は、群集生態学の中心的課題の1つである。他種共存を説明する仮説のひとつとして中規模攪乱仮説が提案されており、多くの生態系での実証研究や理論研究により、この仮説は支持されてきた (例えばConnell 1978)。多くの生態系において中規模の撹乱下で種多様性が最大となる点は共通するが、中規模の程度は生態系ごとに異なっており、その生態系間の差異を生む要因について議論が続いてきた(Kondoh 2001; Adler et al. 2011)。本研究では、生態系(地域)ごとの攪乱レジームの差異によってそれぞれの地域間で種プールの構成種が変わることが、中程度となる攪乱の程度が地域間で異なるという仮説をたて、数理モデルとシミュレーションを用いてその検証を行った。特に次の2点、①種多様性を最大にする攪乱の程度は、地域固有の攪乱レジームに応じて形成される種プールに依存して異なるのか、②異なる攪乱レジームによって形成される個々の固有種プールの構成生物種はその生態的特性において他の地域のものと比べてどのように相違するのか、について解析を行った。
本研究では、Tilman(1994)のモデルを拡張して、種内競争での優位性や増殖率、攪乱耐性を組み込んだ群集構成種の存在割合の経時的変化を表す数理モデルを開発した。さまざまな生態的特性を表す生物種を10000種分用意し、これを始原種プールとした。この始原種プールから生物種を特定の攪乱率Dを持つ地域に侵入競争させ、地域固有の種プールを形成した。その後、地域固有の種プールに攪乱傾度を与え、攪乱傾度への種数の応答を解析した。
本研究では、対象地域の攪乱レジームが異なれば異なる地域固有の種プールが形成されること、また各地域固有種プールの攪乱傾度に対する反応は異なり、種多様性が最も高くなる中規模の攪乱に相当する攪乱の程度は異なることが明らかになった。この結果は、我々の仮説を支持した。