| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-058 (Poster presentation)
鳥散布型樹木の鳥類による種子散布パターンは,周囲の樹木の個体分布や果実量など結実環境によって左右されることが知られている。京都市近郊の二次林では,アカマツやコナラが優占する落葉広葉樹林から,コジイを中心とした常緑広葉樹林に遷移が進行している林分が多く見られる。このような遷移の進行は森林の結実環境を変化させ,果実の被食や種子散布パターンに影響を与えている可能性がある。そこで本研究では、多くの鳥に被食され、暖温帯常緑広葉樹林において十分な誘因性を持つことが報告されているサカキに着目し、遷移段階中期にあたる落葉広葉樹林(以下「落葉林」)と遷移段階後半期にあたるコジイ優占林(以下「常緑林」)において、サカキの開花・結実フェノロジーや果実の消失過程、林内・サカキ樹木下における種子散布の過程,鳥の採餌行動を調べ、遷移の進行に伴う林分の変化がサカキの被食種子散布パターンに与える影響について明らかにすることを目的とした。
2年間の観察において,「落葉林」では10月中旬より果実が成熟し,12月初旬にはほぼ全ての果実が樹冠より消失していた。「常緑林」ではそれにやや遅れ,果実の成熟は11月初旬,果実の消失は1月初旬におこっていた。各林分に規則的に設置されたシードトラップ(2010年~)及びサカキ樹冠下に設置したシードトラップ(2015年~)の落下果実及び種子量の解析から,「落葉林」でのサカキの主な被食種子散布時期は11月~12月となっていたが,「常緑林」での時期は「落葉林」よりも長く,特に豊作年では1月~3月においても多くの種子が散布されていた。サカキの採餌行動は,「落葉林」より「常緑林」において長い期間観察された。これまでの研究から「落葉林」より「常緑林」において鳥類の飛来頭数が季節を通じて多いことが明らかとなっているが,「常緑林」においては果実の採餌も長期間にわたり,盛んに行われている可能性が指摘された。