| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨 ESJ64 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-B-067 (Poster presentation)
今日では、土地利用変化の一つである都市化が送粉者の多様性に負の影響を及ぼしている。都市環境では、特にマルハナバチ類などの長口吻送粉者が減少することが報告されている。その為、生態系機能を維持するうえで重要な機能的多様性の減少が予想される。一般的に長口吻送粉者は、形質(口吻)が一致する長い花筒へ訪花する。その為、都市環境において長口吻送粉者が欠如した場合は、短口吻送粉者による訪花が増加し、花と送粉者の形質の不一致が生じると予測される。つまり、長口吻送粉者の欠如による機能的多様性の低下は、植物―送粉者ネットワーク内の種間相互作用に影響を与えうる。しかしながら、都市化の送粉者機能群多様性への影響を定量的に評価した研究は未だ見られない。本研究では、都市化により①開花植物と送粉者の種数および開花量、個体数は減少するのか。②開花植物と送粉者の機能的多様性は減少するのか。③長口吻送粉者の減少が起こっているのか、それによって長花筒植物への訪花が減少するのか、また短口吻送粉者の訪花の増加によって形質の不一致が生じるのかについて定量的なデータをもとに解析を行った。
本調査は2015、2016年の4月~11月(15サイト、各9回)にかけて行った。全植物出現数は134種、送粉者は全297種12634個体で、双翅目6134個体(48.6%)、ハナバチ4091個体(32.4%)、チョウ1417個体(11.2%)、その他(コウチュウ、カメムシ、カリバチ類)992個体(7.9%)確認された。全開花植物と全送粉者の種数は都市化に伴い有意に減少していた。また、開花植物の機能的多様性は都市化に伴い減少傾向が見られ、送粉者の機能的多様性は有意に減少していた。都市では里山よりも、短口吻送粉者が短花筒花へより多く訪花していた。中・長口吻送粉者の花利用パターンは、里山と都市間で変化しなかった。また、都市化に伴って形質の不一致度は大きくは変化しなかった。